猫と飼い主さまのQOL(生活の質)のために
家に迎えた猫の未来をしっかり考えて備えてあげることはとても重要なことです。猫と飼い主さまがお互いに快適で幸せな時間を過ごすためには、幼い時期から妊娠や出産に関することを考慮しておくことが必要です。発情期になると泣き声のせいでご近所に迷惑がかかる場合があります。飼い主さまにとっても、猫にとってもベストな選択ができるよう、正しい知識を集めましょう。
家に猫を迎えたら
子猫や大人猫、拾った・譲り受けた・ペットショップやブリーダーから迎えたなど、家に猫を迎えるパターンはいろいろありますが、どんな場合でもできるだけ早く猫のホームドクターを決めておくと安心です。
身体の状態を調べてもらうついでに、ワクチンや去勢・避妊手術などについて話を聞いて、信頼できる獣医師かどうかを判断し、かかりつけを決めておきましょう。
特に去勢・避妊手術は初診でいきなりの手術をすることはなく、猫の成長状態をみながら慎重に時期を決める必要があります。どうぞ、なんでも相談できる獣医師をみつけてください。
去勢・避妊手術のメリット
望まれない出産をなくすために
生後間もない子猫のかわいさには特別なものがあります。しかし、生まれてきた子猫たちに信頼できてかわいがってくれる飼い主さまをみつけるのはとても難しいことです。また、妊娠・出産・育児は猫の身体にとっても大きな負担になります。
そしてメスだけでなくオスの場合もそうですが、発情した猫は脱走の欲求が強く、本能に根差しているため完全室内飼いでも隙をみて脱走してしまうケースも多いものです。脱走して子どもができることはよくありますし、慣れていない戸外で事故に遭ってしまうリスクもかなり高いのです。去勢・避妊手術は、こうしたことをなくすことを大きな目的としています。
病気の予防のための去勢・避妊手術
去勢・避妊手術にはもうひとつ、大きなメリットがあります。それは性ホルモンに由来するメス:乳腺腫瘍・子宮・卵巣の病気、オス:うるさくなくなる・おしっこをかけなくなる等を予防することです。6~7歳になるとリスクが高まる深刻な病気ですので、いつまでも健康に過ごすためにも去勢・避妊手術は役立ちます。
より穏やかに過ごすために
発情に関係したストレスをなくすため、穏やかに暮らすことができます。また、脱走もしにくくなるため、ケンカによるケガや事故、感染症や寄生虫などのリスクも軽減します。
猫の発情と出産について
生まれた季節や個体差などにより異なりますが、メスの猫は生後6~9ヶ月頃に初めての発情が起こります。多産ですから5匹以上の子猫を一度に産むことも珍しくありませんし、年に数回出産するケースもあります。
オスの猫には発情期がなく、生殖能力が完成したらメスの発情した匂いを嗅ぐといつでも交尾ができます。生殖能力の完成は生後9~12ヶ月だと言われています。
病気発生リスクを抑える効果が高く回復力のある若い時期に
去勢・避妊手術に最適な時期は、生殖能力が完成する前です。若いと回復力が早く、生殖能力が完成する前に手術を行うことで病気発生リスクを抑える効果が高いのがその理由です。メスもオスも生後半年の時期に行うことがベストとされています。
去勢・避妊手術の内容
事前に健康診断を受けて、メリットやデメリットなどの説明をしっかり受け、納得した上で最適な時期を決めて手術日を予約します。
どちらの手術も全身麻酔をした上で行います。
オスの去勢手術
手術の所要時間は1時間程度です。事前検査の必要もあるため、多くは午前中に預けて夕方引き取る日帰りで行います。ご要望があれば1泊して翌朝引き取る場合もあります。手術では、精巣を摘出します。※日帰りの方は翌日診察に来ていただきます。
メスの避妊手術
手術の所要時間は1~2時間程度です。開腹手術ですので、午前中に預けて事前検査を行い、日帰りで手術を行います。ご要望があれば1泊して翌朝引き取る場合もあります。手術では、開腹して卵巣と子宮の両方を摘出します。※日帰りの方は翌日診察に来ていただきます。
去勢・避妊手術のメデリット
去勢・避妊手術では、本来の性ホルモンの分泌がなくなってしまうため、体調や性格に変化が現れる可能性があります。
性格の変化
ある程度、メスがややオス寄りの性格になり、オスがややメスよりの性格になる傾向があります。より甘えるようになったと感じる飼い主さまが多い印象があります。オスとメスのどちらも問題行動は減少します。オスの場合、マーキングや叫び、攻撃性などが軽減され、特に生殖能力が完成する前に去勢手術を受けているとマーキング自体をしないことがほとんどです。猫のマーキングは強い匂いが残るため、去勢していないオスの猫に関するお悩みではかなり上位に入っています。
肥満になりやすい
性ホルモンの分泌がなくなると活動量が減って基礎代謝量が低下しますので、去勢・避妊手術を受けると太りやすくなります。そのためきちんと食事コントロールをする必要があります。食べる楽しみしかないからとついオヤツをあげ過ぎたりしないように注意しましょう。肥満は猫にとっても生活習慣病のリスクを上げてしまいます。
全身麻酔のリスク
現在の麻酔は大きく進化しており、安全性もかなり高まっています。ただし、全身麻酔のリスクはゼロではありません。さらに、高齢だったり、病気を持っているなど体力が低下した猫の場合には、麻酔のリスクがより高まります。そのため、手術をおすすめできない場合もあります。また、麻酔は肝機能に負担をかける可能性があり、まれですが肝機能に影響を及ぼすことも考えられます。
手術費用
猫の年齢や病気の有無などにより手術費用は変わってきます。メスの手術の方がより複雑なので、オスの手術より高額になります。
※ご希望の方には、手術前日のお預かりや手術を1泊入院でお受けすることができます。お気軽にご相談ください。
目安の費用※症状や種類によって金額が異なる場合がございます。
オスの去勢手術(入院なし) | 13,000円~ |
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メスの避妊手術(入院なし) | 20,000円~ |
※東大阪市にご在宅の方は、避妊去勢手術の助成金の申請ができます。保健所または動物指導センターにご確認ください。
手術費用に含まれるもの
術前に行う麻酔のための診察料、血液検査料、尿・便検査料、全身麻酔料、手術技術料、手術室使用料、手術器具滅菌料、器具料(針・縫合糸・マスクなど)入院料