犬の去勢手術(避妊)

犬の去勢手術

犬と飼い主さまにとって、ベストな選択のために

まだ幼い子犬だったとしても、家に迎えたその時に未来をしっかり考えてあげることは、パートナーとしてお互いに幸福な時間を積み上げていく基礎になります。妊娠や出産に関することも、未来に関する重要な問題です。正しい知識を持って、飼い主さまとそのコにとってベストな選択をしてください。

去勢・避妊手術のメリット

望まれない出産をなくすために

犬の去勢手術生まれたばかりの子犬はとてもかわいいものですし、かわいがっているコが産んだとなればそのかわいさはひとしおです。ただし、サイズや犬種などにより、犬は1回の出産で数頭~10頭までの子犬を産みます。信頼できる相手に引き取ってもらいたいと、子犬全員に飼い主さまを見つけるのはとても大変なことです。遺伝の問題から帝王切開でなければ出産が不可能なケースもあり、妊娠出産を繰り返させてしまうのもかわいそうなことです。去勢・避妊手術はもともと、こうした望まれない出産を避けるためのものでした。

より健康な日々を送るために

最近では、特に繁殖の予定がなければ、将来的にリスクの高い病気を予防するために去勢・避妊手術を選択する飼い主さまが増えています。性ホルモンが関係している深刻な病気がいくつかありますが、去勢・避妊手術を行うことで、こうした病気の予防になるからです。

より穏やかに過ごすために

より穏やかに過ごすために避妊手術はメスの犬の心身にとても大きなストレスとなる発情をなくします。オスは、ケンカや脱走などのリスクが減り、問題行動が減少します。発情に関係した行動は本能に根差しているので、欲求がとても強く、コントロールするのは難しいものですし、抑圧することはさらに大きなストレスを与えることになります。穏やかに暮らすために、避妊・去勢手術は役立つのです。

犬の発情(ヒート)について

犬の去勢手術種類やサイズ、個体差などにより異なりますが、メスは生後6~8ヶ月頃に初めての発情が起こり、以後は年1~2回の発情が起こるようになります。小型犬より大型犬の方が最初の発情が遅く、間隔も長くなる傾向があります。出産は受精から62~63日後です。 オスには発情期がなく、生殖能力が完成したらメスの発情した匂いを嗅ぐといつでも交尾ができます。匂いはかなり遠くまで届くと言われているので、室内飼いをしていても誘われてしまいます。生殖能力はオスもメスも生後約半年からとなります。

病気発生リスクを抑える効果と回復力のある若い時期に

去勢・避妊手術に最適な時期は、生殖能力が完成する前だと言われています。回復力が早く、病気発生リスクを抑える効果が高いのがその理由です。メスは生後数ヶ月、オスは生後半年ほどの時期に行うことがベストとされています。

去勢・避妊手術の内容

事前に健康診断を受けて、メリットやデメリットなどの説明をしっかり受け、納得した上で最適な時期を決めて手術日を予約します。

どちらの手術も全身麻酔をした上で行います。

オスの去勢手術

手術の所要時間は1時間程度です。事前検査の必要もあるため、多くは午前中に預けて夕方引き取る日帰りで行われますが、1泊して翌朝引き取る場合もあります。手術では、包皮と陰嚢の間の正中線の上を1cmほど切開し、精巣と精巣上体が納まっている睾丸を摘出します。

メスの避妊手術

手術の所要時間は1~2時間程度です。開腹手術ですので、午前中に預けて事前検査を行い、手術後は帰宅していただけます。ご依頼いただきましたら1泊お預かりもできます。手術では、開腹して卵巣か子宮、または両方を摘出します。

予防できる病気

メス

乳腺腫瘍

乳腺にできる腫瘍です。発病する半分は悪性で、その半分はいわゆるガンであり、メスは、500頭に1頭の割合で発病するとされています、 この乳腺腫瘍の発症には性ホルモンの関わりが重要視されており、初期発情前に避妊手術した場合の発生率は0.05%と極端に低いのが特徴です。また、1回発情後は20%となり、2回発情以降は約25%の発生率となるとされています。発情回数と比例して発生率が上がるため、早めの避妊手術を受ける大きなメリットと言えます。

子宮蓄膿症

子宮内膜にホルモンが増えてしまい細菌が増えやすい環境になってしまうため、膿がたまってしまう病気です。こうした発生メカニズムから、出産経験のない高齢のメスによく見られる疾患ですが、避妊手術で病気の発症を予防できます。

オス

精巣腫瘍

精巣にできる腫瘍であり、放置すると大きくなっていきます。早いうちに摘出しないでいると、高齢になってからの手術はリスクが高いため命に危険が及ぶ可能性があります。去勢手術では精巣を摘出してしまうので、発症を防ぐことができます。

前立腺肥大

前立腺が肥大し、組織内にできたすき間に体液や血液がたまってしまう病気です。去勢手術を受けていない場合、6~7歳以降になると発症リスクが高まります。

去勢・避妊手術のメデリット

去勢・避妊手術では、本来の性ホルモンの分泌がなくなってしまうため、体調や性格に変化が現れる可能性があります。

性格の変化

去勢手術を受けたオスが甘えん坊になったり、避妊手術を受けたメスの気が強くなったという飼い主さまのお話をうかがったことはあります。ただし、オスやメスとして成熟する前に去勢・避妊手術を受けたことで性格に変化が起こるという明確な結論はまだ出ていません。

肥満になりやすい

性ホルモンの分泌がなくなると活動量が減って基礎代謝量が低下しますので、去勢・避妊手術を受けると太りやすくなるという傾向があります。ただし、これは飼い主さまが「食べることしか楽しみがなくなったのでは」と思い込んでついオヤツをあげすぎたりしてしまうことも大きな原因になっています。肥満による生活習慣病は犬にも増えています。体重管理をしっかり行って、健康体重を保ちましょう。

全身麻酔のリスク

現在の麻酔は大きく進化しており、安全性もかなり高まっていますが、全身麻酔のリスクはゼロではありません。高齢だったり、病気を持っているなど体力が低下した犬の場合には、麻酔のリスクがより高くなってしまいます。また、麻酔は肝機能に負担をかけるため、まれですが肝機能に影響を及ぼす可能性もあります。

手術費用

サイズや種類、年齢、病気の有無などにより手術費用は変わってきます。メスの手術の方がより複雑なので、オスの手術より高額になります。
※ご希望の方には、手術前日のお預かりや手術を1泊入院でお受けすることができます。お気軽にご相談ください。

目安の費用※大型犬の場合や症状によって金額が異なる場合があります。

オスの去勢手術(入院なし) 20,000円~30,000円
メスの避妊手術(入院なし) 30,000円~50,000円

手術費用に含まれるもの

術前に行う麻酔のための診察料、血液検査料、全身麻酔料、手術技術料、点滴料、入院料(入院の場合:基本は日帰りです)