フィラリア症とは
フィラリア症は、蚊が媒介する糸状の寄生虫が起こす病気です。犬の心臓や肺動脈に寄生し、成虫になると30cm にもなります。犬フィラリアが寄生すると血液の流れが悪くなり、様々な障害が出現し、放置すると死に至る可能性もあります。治療も可能ですが、大きな危険や負担が伴います。駆除薬による治療だけでなく、心臓からフィラリアを取り出す必要が生じるケースもあります。
犬にとって重大な病気ですが、近年になって猫もかかることがわかってきています。猫の場合、主に肺に障害を起こしますが、寄生する虫の数が少ないため診断が難しく、健康そうに見えているのに突然死する可能性があります。咳、呼吸困難、嘔吐といった症状が現れた段階ではすでに生命が危険な状態になっています。猫の治療法が確立されていないため、事前の予防がとても重要になってきます。
犬フィラリア症の予防方法について
犬フィラリア症は予防することができる病気です。ただし、予防には事前検査と正しい投薬が不可欠です。蚊が媒介する寄生虫が原因ですので、予防時期は地域によって異なります。事前検査を受け、獣医師の指示を守ってきちんと投薬しましょう。
必ず事前検査を受けましょう
感染している状態で予防薬を使うと、ショック症状を起こして死に至る可能性があります。
血液検査で犬フィラリアの寄生の有無を確認します。検査キットを使った簡単な検査です。犬フィラリア症は初期症状がわかりにくいため、予防薬を投与する前に犬フィラリアが寄生していないかを必ずこの事前検査で確かめます。犬フィラリア成虫はミクロフィラリアを産出していますが、これが体内にいる状態で予防薬を飲ませると、一度に大量のミクロフィラリアが駆除され、それによってショック症状を起こし、最悪の場合は死に至る可能性があります。
予防方法
毎月1回、1ヵ月間隔で、犬フィラリア症予防薬を与えることで予防できます。予防薬には、チュアブルタイプ、タブレットなどの種類があり、好みや性格によって選ぶことができます。
予防時期
その地方で蚊が発生する時期に合わせて予防します。必ず獣医師の指示に従って予防しましょう。
途中の投薬を忘れてしまったり、シーズン最後の投薬を省略してしまうと、せっかく他の月にはきちんと投薬していたにもかかわらず犬フィラリア症に感染する危険性があります。たった1回忘れただけで感染してしまったら、それまでの投薬が無駄になります。
スマートフォンのスケジュールで管理したり、目立つ場所のカレンダーに記入したり、メール通知サービスなどを使うなど工夫して、獣医師の指示通り最後まで毎月必ず投薬しましょう。
注意しましょう
途中で投薬を忘れたら
投薬を忘れてしまったことに気付いたら、当院までご相談ください。その際、最後に飲ませた日がいつだったのかを伝えてください。
最後の投薬までしっかり行いましょう
獣医師が指示する投薬期間は、その地域の蚊の発生状況を調べた上で判断したものです。地球温暖化などの影響により、蚊が発生する期間は以前に比べて長くなっています。思いがけない場所にいつまでも高い温度を保つ場所があって、そこで蚊が発生する可能性もります。涼しくなったからと自己判断で投薬をやめてしまって、犬フィラリアに感染するケースは珍しくありません。それまでの投薬を無駄にしないためにも、必ず最後の投薬までしっかり行ってください。
完全室内飼いでも犬フィラリア症のリスクがあります
散歩をしない犬も犬フィラリア症になります。蚊は室内外を行き来できますし、マンションの高層階でもエレベーターなどに入り込んだり、荷物についてくるなどして室内に蚊が侵入するケースがあります。「このコは散歩にいかないから」と予防をしないのは危険です。
フィラリア感染のメカニズム
犬フィラリアに感染した犬の血液には、ミクロフィラリアという犬フィラリアの幼虫がいます。感染した犬の血を蚊が吸うと、血液と共に幼虫が吸い込まれます。その蚊が感染していない犬の血を吸う時に、犬フィラリアの幼虫を感染させてしまうのです。
感染した幼虫は犬の身体の中を移動しながら成長していき、やがて未成熟虫となって血管に入り込んで、最終的に肺動脈や心臓に成虫となって寄生します。
感染しても、未成熟虫が血管内に入っていない段階なら、予防薬で100%の駆除が可能です。感染から未成熟虫になるまでには、70日前後かかると言われています。
駆除薬は、毎月1回、幼虫の段階で犬フィラリアを駆除して犬フィラリア症を予防します。
犬のフィラリア症の症状について
犬フィラリア症は感染してもなかなか症状が現れにくい病気です。蚊に運ばれた幼虫が成長し、成虫となって心臓や肺動脈に寄生するようになってはじめて症状が現れてくるためです。
症状
- 咳
- 元気がない
- 食欲がない
- 苦しそうに呼吸をしている
- 痩せてくる
- おなかが膨らんできた
- 血尿が出る
上で紹介したような症状が出てくるのは、かなり病気が進行してからです。こうした症状に気付いたら、できるだけ早く動物病院で診てもらう必要があります。
犬フィラリア症の治療は、薬で行う駆除がありますが、成虫が心臓に詰まるなどの危険性があります。症状によっては、首の血管から器具を挿入して心臓の成虫を取り除く手術が必要なこともあり、これもまたリスクのある治療法です。年齢などによりこうした治療が不可能な場合には、症状をある程度軽減するための処置しかできません。また、治療がうまく行った場合でも、後遺症が出る場合もあります。